【展示室3&アトリウム】
スペイン南西部と北アフリカのごく限られた地域に自生する、ちょっと不思議な緑色をした<原種スイセン>。この秋咲きのスイセンは、星のように広がるクモの足のような花びらと、驚くほど甘く軽やかな香りが特徴です。花は10月頃に咲き、くすんだ緑色の花弁は二重の輪になっており、外輪と内輪それぞれ3枚ずつで構成されています。丈夫な株では、花茎に最大4輪の花をつけることもあります。
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特に面白いのが、外側の花弁の先端近くにある白いふわふわした付属物。
見た目は害虫のようですが、実は花の一部で、花粉媒介者を引き寄せるために進化したものと考えられています。(内側の花弁にも小さな似た構造があります。)
これはすべての株で同じ位置に現れる特徴で、自然界のちょっとした「小さな秘密」と言えます。
このスイセンの生態もユニークです。花を咲かせる年は葉を全く作らず、花茎だけで光合成を行います。一方、花が咲かない年には、一本の太い葉を伸ばして光合成を行い、30cm以上に成長することもあります。この葉は晩秋まで緑を保ち、力強さを見せてくれます。
ただし、この植物は初心者には難しく、栽培には少し工夫と経験、そして運が必要と言われています。種子も扱いが難しく、播種後すぐに発芽することもあれば、数か月~1年休眠することもあります。発芽してから開花までには5~6年かかるため、気長に育てる必要があります。
それでも、この緑色スイセンの香りと姿は、育てる価値十分。珍しいだけでなく、庭や鉢で育てる楽しみも大きく、栽培者にとっては「育てがいのある宝石」のような存在です。
学名:Narcissus viridiflorus
植物分類:ヒガンバナ科スイセン属
原産地:モロッコ、スペイン